第43章 諦めない
「………そろそろお父さんが帰って来る頃かな……」
病院から帰ってくると聖知は父親に言われた通りに部屋で大人しくして眠っていた。部活が終わる時間が近づくとやはり何かご飯作った方がいいのではと……ベッドから起き上がり立ち上がる。
「………っ…」
その拍子に見覚えのある袋が落ちてそっと拾う。
水族館の袋に笠松からもらったバレッタが入っていてそっと中身を開ける。
「……これ………返したほうがいいのかな……」
別れを自分から切り出したとはいえ……笠松にもらったプレゼントを大事そうに抱えて涙が溢れ雫が水族館の袋にポタポタ落ちる。
私は…笠松先輩を傷付けた……
私は……小林先輩に汚されたと思っていた。
ワナにかけられて……それでも私を助けるために駆けつけてくれた……それだけですごく嬉しいのに……保健室に来た笠松先輩は助けられなかったことを気にして苦悶の表情を浮かべていた。
桐生からの忠告を受けていても…私は…簡単に犯されてしまったと思い込んでいた。
今日の出来事をこれから先…思い出す度に…
笠松先輩にも…苦しみを与えてしまうのかと思うと…
たまらなく申し訳なくて……
見ていられなかった…
…私が…汚されたから……
笠松先輩の事だから…きっと……
苦しみをわかってくれる……でも……
好きな人に苦しんでほしくない…
気がついたら……別れを切り出していた……
笠松先輩は…約束を守れなかったから別れを切り出したと思い込んでいる……
そんな風に思ったことは一度もない。
今まで何度も助けてくれて…駆けつけてくれて…感謝してもしきれない…
でも……本当のことなんか言えない……
私が汚されたことで笠松先輩にまで引きずってほしくない……このまま別れられるなら私は悪く思われてもいい…
否定も肯定もしないでいると笠松先輩は傷付いた表情で出ていった。
これで良かったんだ………これで………