第43章 諦めない
『聖知は俺がもらう』
そう黄瀬に言われてから心がざわつく。
もう、関係ない。
俺には何をする力もねえってわかってんのに…
もしかしたら、黄瀬と聖知が付き合うことになると思うと…たまらなく嫉妬しちまう自分がいる。
1時間後…
体育館を飛び出して病院へ行った瑛一さんが戻ってきた。
監督が聖知の怪我の具合を聞いても深刻な表情を浮かべて考え込んでいる。
怪我の具合が悪かったのか…
病院行って何か問題が見つかったのか……
他にも怪我した場所があったのか……
様々な憶測が脳内でぐるぐる駆け回るように聖知が心配になる。
別れたんだから関係ねえと黄瀬に言ったが…
…俺はやっぱり……
「聖知っちと笠松先輩別れたらしいっすよ。」
森山の話を聞いていなくて、ふと今の現実をつきつけるように黄瀬が俺にも聞こえる声で話し出す。
黄瀬の表情は、俺の気持ちがわかっているかのように『今さら心配なんかするな』というようにフッと笑っているように見える。
「休憩中に無駄口叩くな。」
いつもなら殴り飛ばしてる所だが……いまの俺はそう告げてバスケに打ち込むように逃げる事しか出来なかった。