第43章 諦めない
「ありがとうございました。
………っ…お…お父さん…
っ…ちょっ……ここ病院っ…」
聖知が診察室から出てくると待っていたかのように近づいて瑛一にギュッと抱きしめられる。
なぜここいるのがわかったのか…それよりも周りからジロジロ見られて恥ずかしくなり離れようとしてもなかなか離そうとしない。
瑛一は頭に包帯を巻いている痛々しい娘の姿に我慢できず…しばらくそのままの状態で抱きしめられていた。
「………そうか。……大したことなくてよかった。
今日は家でゆっくりしてろよ?
いいか…飯とか作らなくていいからな…
ゆっくり寝てろよ?
練習が終わったら早めに戻る…」
聖知から診察の結果異常がないことを聞くと安堵してマンションまでの帰り道、言うことを聞かない子供に何度も諭すように話をする。
「……わかったから…早く戻って…」
「…いいか…?…戸締まりもきちんとするんだぞ。
俺以外来ても誰も開けるな。」
最後までガミガミ言うと瑛一は海常高校へと戻っていく。
「なんとか間に合ったな……」
「小林…お前…マジであの薬品、聖知ちゃんに使ったのかよ。」
「…………」
海常に着いて体育館へ戻ろうとする最中…サッカー部が休憩を取っているのが見え、娘の名前が耳に入ると近づいて小林の背後に立つ。