第42章 波乱
「…………」
「怪我の具合は…どうなんですか……」
「やめてよ……なんでこんな時だけ…
そういうこと言わないでよ……
いつもみたいに…馬鹿にすればいいじゃない…
っ……」
なぜか涙が出た……
嫌いな相手に泣いてる姿なんか見せたくない…
そのはずなのに……
それでも…優しい言葉をかけられて…嬉しかった…
私はそのまま桐生の前で声を出して泣いてしまった。
「少しは落ち着かれましたか…?」
「………うん…」
「私から経緯を説明しますとこうです…」
泣きやむとどこからかハンカチを差し出して受け取ると桐生が話始める。
「私の予想では、笠松様は間に合わず、黄瀬様がお嬢様とあの男…小林様と話している所に鉢合わせするとよんでいました。しかし…私が思った以上に彼の凶暴性は見抜けず…結果、怪我を負いこのような事態になるという失態になってしまいました。」
「……………」
「良かったのは……黄瀬様が助けに来たタイミングでしょうか…。恐らく聞いてはいなかと思いますが……気絶してからすぐに黄瀬様が助けに入ってくれたみたいですよ。」
「……え…?」
「そこで寝ている先生からお嬢様の衣服は乱れは一切なく…
黄瀬様からの証言でも「上級生が襲おうとしていた」と聞きました。
先ほど、現場に行くとあの男のスマホが
録画状態で放置されていました。
中身を見ると録画開始直後から黄瀬様が倉庫に来て
相手の方を殴り飛ばして…
お嬢様を助け出してる状況が確認が取れました。」
その事実を聞いて聖知をハンカチを落として涙を浮かべ安堵するように脱力する。
でも…それは同時に激しく後悔が襲う。
「じゃあ……私……何もされてないって……事で…いいの?」
「……襲われて怪我を負わされたって事以外はないです。」
「…………そう……良かった……でも……もう遅い…
私……てっきり……」
後悔してももう遅い……
私は笠松先輩を傷つけて別れてしまった…
もう…元には戻れない…