第37章 如月家
「用件だけ話す…母が言ってた…」
「あぁ……あのご命令の件で来られたんですね……でも…その前に私から……一言では足りませんね…言わせてもらってもいいですか…」
「………何…」
桐生は私の前に立つとクスッと笑顔を浮かべすぐに冷たい表情を浮かべてほくそ笑むと続けてこう言った。
「確かに澄香様からお嬢様を守るように命令を承りましたが……それは…お嬢様と私の約束の上で成り立っているものだと理解してくださいね…?」
「…………」
「貴女が私との約束を守り続ける限りお守りすると約束しましょう……ですが…約束を守れない場合は……わかっていますよね…?」
本当にこの男は腹が立つ……
桐生が何を言おうとしているのかがわかり…
睨みつけてもクスッと面白そうに笑うだけ。
昔の私なら…すぐに泣いていたが……今は違う……
私の過去の傷を抉るように話をしようとしているのがわかり…でも何も言えずに黙って聞くことしかできなかった。
「その時は……ここに…戻っていただきます。もちろん、約束を守れなかった代償として…学校以外の行動も私の監視の中で制限します。そうなれば…学校以外は外に出られませんね…あの時のように…隔離状態に逆戻りです…」
「ッ…!」
隔離という言葉にズキっと心が痛み手を強く握りしめて桐生を睨みつけると笠松先輩が桐生の前に立ち会話を止める。
「止めろッ…!……さっきから聞いてたらッ…人の心の傷を抉って…楽しいかよ…!」
「…おや……愛されてますね……ですが…私は事実を述べているだけ…勝手に傷心に浸るのはご自由にどうぞ…」
「ッ…てめぇ…ッ…いいかげんにッ…!」
「ッ…もういいです……言ってることは……本当に……ただの事実ですから……」
笠松先輩が庇ってくれたことに嬉しい気持ちはあるものの、桐生が言ったことは多少言い方に癖…卑しい言い方であっても彼が言っているのはただの事実のみ。これ以上この言い合いに意味をなさないと思いキレそうになっている笠松先輩を止める。