第37章 如月家
「ッ…!!」
「ッ…ど…どういうことだッ…これはッ…聖知ッ…入るなッ!」
目の前には桐生が血を流して倒れていて私が中に入ろうとすると慌てて笠松先輩に止められる。
「………いえ……大丈夫です……」
「ダメだッ…!ッ…警察とか…救急車とか…」
「いえ……だって……」
冷静ではない笠松先輩の制止を抜けて玄関ホールに入って桐生の近くへ行くとため息を吐く。
「いつまでそうやって…寝ているつもり……いくらなんでも…悪ふざけが過ぎるんじゃないの……」
「……やれやれ…………面白くないですね………もう少し…お嬢様のうるさい叫び声が聞こえると期待していましたが……」
血まみれの状態の男がムクっと起き上がり悪びれる様子もなく立ち上がると血塗れの燕尾服を剥ぐとどういう仕掛けのか埃一つない燕尾服姿に戻り血塗れになっている玄関ホールが白いクロスでかざすと血溜まりは無くなっていた。
「タネも仕掛けもございません。それはそうと……お一人でくるものとばかり思っていました。この姿でお会いするのは初めてですね……笠松様…いえ…笠松君とお呼びしたらいいでしょうか……」
「……ここにくるまで…半信半疑だった。胡散臭い教師だと最初から思っていたが……悪趣味だな…」
桐生は笠松先輩に近づくとクスッと一礼をして一見礼儀正しい振る舞いに見えても冷たい表情を浮かべて挨拶を交わしていた。
「ただの余興ですよ……貴方には必ずもう一度会えると思ってました。お嬢様はすっかり3年見ない間に大人っぽくなられましたね…?」
「私は貴方と無駄話をしに来たわけじゃない。」
「やれやれ…久しぶりに帰ってきたんですから…ごゆっくりされてはいかがですか…?」
冷たい表情で人を小馬鹿にしたような目がいつも嫌いだった。明らかに何か企んでいる雰囲気にこっちからは隙は一切見せずに睨みつける。