第35章 別れと不穏
「……そんな顔しないの…嫌な気持ちはわかるけど……安全は保証されているようなものだから私は安心だわ。」
「……笠松先輩が…いつも…一緒にいてくれるから必要ない……」
「…そんな事言わないで……本当に困ったときは頼りになるから頼りなさい。桐生のこと…信用はしなくて良いから…力だけは信頼しなさい。」
私がゲンナリした顔をしていると母は桐生の力は信頼しているようだった。桐生は小さい頃から笑顔で物腰柔らかそうに見えるけど、本当は腹黒くて私が余計な事しないように祖母からの命令で監視しているに違いないと思った。
「……考えとく…」
その日、お風呂を終えて来客用の布団を引こうとすると、「久しぶりに一緒に寝ましょう♡」と半ば無理やり狭い布団で一緒に就寝した。
ーー翌朝ーー
「聖知……いつもこんなに早く起きてるの?」
「朝練があるから…いつもこんな感じだよ?」
翌朝、早くに起きて身支度を整えて朝食の準備をしていると母が起床し、まだ外が薄暗い中起きている様子に驚かれる。
「お母さん、何時に帰るの…?」
「朝の便で帰るわ……また…少し会えないけど…寂しくない…?」
「……寂しいよ……でも…身体に気をつけてね…あと…無理しないで…」
朝食を食べながら寂しいか聞かれると、いつもなら何も答えていなかったが「寂しい」というとお母さんは少し驚きいつもの笑顔に戻る。
「大丈夫…また近いうちに会いにいくから…」
「うん…」
朝食を食べ終えて、マンションから出るとお母さんが呼んだタクシーがすでに来ていて母は乗る前に私をギュッと抱きしめて「またね。」と笑顔でタクシーに乗り車を走らせると手を振り行ってしまった。