第35章 別れと不穏
「赤司…くん…が…婚約者…?」
「そう……これは後からわかったことなんだけど……最初から母は…貴女を日本に留学させて赤司家へ嫁がせることが目的だったのよ。だから、同じ帝光中へ通わせて…聖知を赤司家に嫁ぐ資格があるのか…吟味してもらってたってとこかしら……」
「でも……赤司くんから……そんな話は…聞いた事ないけど……」
中学時代最初はよく話す事もあったし、仲が良い時もあったがある日を境に私の知ってる赤司君ではなくなり、卒業してからは連絡を取ったことがない。
いまだに…赤司君が婚約者だなんて…信じられなかった。
「…少なくとも…当時知ってた可能性はあると思うけど…真意はわからない……でも、こんな話ぶち壊すから安心してね♡」
「…………」
「自分の気持ちを捻じ曲げてまで、好きでもない人と結婚する必要なんてない。私がなんとかするから…聖知は笠松君の事だけ考えていなさい。」
母は、「任せなさい!」とニッコリ微笑み、優しい表情を浮かべて心配させないように優しく抱きしめてくれた。
「あと…これは…桐生の話なんだけど……聖知は…嫌かもしれないけど…今後は…桐生に、聖知を守るようにって伝えたわ……」
「ッ…え…ちょッ…ダメッ…!…だって…そんなことしたら……」
笠松先輩の事がバレて祖母に連絡されると思い慌てたように言うと、「大丈夫!」と母はニッコリ微笑む。
「安心して…なぜか桐生は笠松君の事を知ってたけど……母には報告してないの……」
「………どういうこと……?」
「害虫じゃないと判断しましたって言ってだけど……よくわからない……おそらく、近いうちに聖知の前に現れると思うから…伝えとこうと思って……聖知は…桐生に…接近禁止って言ってたみたいだけど……聖知はやっぱり女の子だし……何かあったらと思うと……心配なの……あれでも腕は確かだから……」
「ッ………わかった……。私の方から…一回だけ…屋敷に言って話す……。」
3年間、屋敷にも絶対に寄りつかず顔も見たくなかった私は桐生にも周辺や2度と近づかないよう出て行く時に命令した。
お母さんが心配する気持ちはわかるけど、あの執事と顔を合わすかと思うと今からげんなりして行くのも憂鬱な気分になる。