第34章 信頼の大きさ
「ッ……くッ……」
「…なんだ……もう終わりか?」
ぜってぇ無理だと思ってたが……早すぎるッ……
15回目なのに、瑛一さん自身は汗すらかいてねえ…
全然抜けねえし……1回くらいは抜けるかもと思ってたが甘すぎた…
やっぱり…プロとして活躍している選手だと改めて思っていると再びシュートをブロックされた。
「どうする…?…諦めるか?」
「ッ……まだまだッ…ッ…ぜってぇ抜くッ…」
俺は「諦めるか」って言われた時、瑛一さんを抜くことよりも聖知を諦めるかと聞かれているようで苛立ち再び16回目に挑んだ。
ーー2時間後ーー
ハアッ……ハアッ……
マジで隙がねえ……だが……1つだけ抜ける方法を見つけたッ……
一か八かの賭けだがッ……これならッ……
既に回数は25回目…負かされ続けてある事に気がついた。
「もういいだろ……無理だ…諦めろ…」
「そういう諦める性分じゃないんで…ッ……」
瑛一さんは相変わらず余裕の笑みを浮かべていて俺と違いまだ全然本気じゃない様子だった。だからといってぜってぇ諦めたくなくて俺は再び26回目に挑む。
案の定すぐにボールをスティールされてしまう。だが…スティールされることを前提に俺は無造作に突っ込んだ。何回もスティールされ続けているうちにスティールされるボールが弾かれる動きを予測。弾かれたボールに飛びつくようにボールを取り瑛一さんでも届かない位置からシュートモーションに入る。
「チッ…!」
瑛一さんがシュートをブロックしようとジャンプすると俺は咄嗟にターンシュートに切り替えてボールを放つ。
「甘めえよ…!」
瑛一さんが再びジャンプしてボールをブロックされると思った瞬間…
「瑛一さん……何やってるの…?」
「ッ……あ……しまッ…!」
後ろから昨日聞いた声がしたと思って振り返ると聖知の母親である澄香さんが呆れた顔でこっちを見ていた。
咄嗟のことで瑛一さんも気が逸れてしまったのか…最初からボールに手が届かなかったのかわからないが…ブロックのタイミングがずれてしまい俺の放ったボールはゴールへと入った。