第34章 信頼の大きさ
「聖知が……自分の考えや気持ちを話すなんて……初めてでな……正直驚いた……聖知からお前の話を聞いて……だが…確信した……悔しいが……聖知を変えてくれたのはお前だ……それは…親として…礼を言いたい……ありがとな……」
聖知が…昨日…何か話をしたのだと確信して話を聞いていると再びお礼を言う瑛一さんは初めて俺に優しい表情を向けてくれた。
「いや………確かに……俺は…聖知を支えたいって思って…色々…言ったりしたけど……それを…自分で…変えていったのは……聖知自身の…心の…強さだって…俺は思います。」
「………そうだな……本当に…交際1ヶ月かってくらい…良く見てんな……俺は…お前が聖知の事を大切に想っていることは認める……だが………聖知との付き合いを認めるのはまた……別の話だ。」
「ッ………」
そう言うと瑛一さんは再び真剣な顔で俺を見てバスケのゴールを指差した。
俺はわからずにいると瑛一さんはため息をついて着ている上着を脱ぎ出す。
「1on1で一度でも俺を抜いたら認めてやる……俺は自分より弱い奴に娘を任せたくないからな…」
「……いや……抜くって……」
「なんだ……プロ相手に…やる前から無理ってことか…?……敵前逃亡したいなら…無理にとは言わないぜ……その程度の気持ちなら…聖知の事も…さっさと諦めた方がいいだろう……」
「ッ…!…やらないなんて…言って…ないですッ…」
俺は、挑発めいた事を言われると左手の拳を強く握りしめてボールをギュッと掴み瑛一さんと対峙した。