第34章 信頼の大きさ
ーー澄香視点ーー
「澄香……どういうつもりだ……。本気で聖知を連れて行かないつもりなのか…」
「そうよ。アメリカに連れて行っても結局同じ…探し出されて最悪また屋敷に連れ戻されかねない状況になるかもしれないし……何より……聖知のあんな顔見たら連れて行くなんて……私にはできない……でも…私も何も考えてないわけじゃない。婚約の話は…私がなんとかする…」
笠松君がいなくなると私の夫である瑛一さんは、アメリカに聖知を連れていかないことについて改めて聞かれる。
笠松君の言っていたことは私も考えていた。逃げるのには限界が必ず来る。遅かれ早かれ母とはその問題に向き合う時が来るとわかってはいたけど……
まさか聖知と付き合って間もない男の子にそのことを嗜められるとは思っていなかったけどね……
それくらい真剣に聖知の事を考えてくれているんだと言葉からだけではなく彼の態度からもすごく伝わってきた。
まぁ……瑛一さんは……聖知のことになるとすぐカッとするから本当に困る時がよくある。案の定…最後まで笠松君のことは認めようとしなかった。
「………聖知は……何の話をしたんだ……」
「…気になるんだったら聖知に直接聞くことね……まだ謝ってないんでしょ……?」
「それはッ……まさか……あいつが来るなんて予想できるはずないだろッ…」
「じゃあ、今晩、3人で晩御飯食べましょう。そこで謝るのはどう…?…言っとくけど落ち着いて穏やかに話すのよ…間違っても笠松君の悪口とかそう言うのは言わないこと。」
「ッ……わ…わかってるッ……」
瑛一さんは、聖知と何を話したか内容が気になるようで私に内容を聞こうとしたが内容は教えず自分で話すように勧めた。
1人では多分、また言い合いになりかねないと思い仲裁のため晩御飯を食べに行くことを提案した。
瑛一さんは私の言うことに対して苦笑いを浮かべていて、本当にわかっているのか…わかっていないのか…バスケではすぐ決断できるのに…娘のことになると不器用だと改めて思う。