第33章 娘と父親
「そう…瑛一さん…はっきり言うけど………最低」
「は……?」
「は……?じゃなくて……まず咄嗟に出たとはいえ…「今まで気持ちを話さなかったのはお前だろ」だっけ……聖知は話さなかったんじゃなくて話せなかったの…………いきなり隔離されて訳もわからない人たちに囲まれて極度のストレス状態の時に分別も何もわからない中…自分の父親と母親を天秤にかけられて脅されている状態に……本当に瑛一さん…聖知が話せる状態だと思っているの……?」
「そんな訳ねえだろッ…つい頭に血が上って……」
「……後……なんで叩いたの…?」
妻である澄香に話すと落ち込んでいる中「最低」という言葉を言われてさらにネガティブ思考になりつつあった。
澄香からの話でよくわかる……聖知は話さなかったじゃなく話せなかった。という状況だったのに酷いことを言ってしまったと改めて後悔した。
「……話を全く聞こうとしなかったから……つい…」
「………聖知が…何で……母に怯えていたのか…わかる…?」
「…………怖かったからだろ…」
「それもあるけど……ずっと…ずっと…反抗するたび、失敗するたびに叩かれていたの。」
「ッ……!」
「瑛一さん……あなたは……母と同じ事をやってしまってるの……」
「ッ……悪い……」
「反省してる…?」
「当たり前だろッ…」
「じゃあ、まず謝らないと…じゃないと…本当に完全に嫌われるわよ」
「ッ…う…」
俺は知らなかったとはいえ…叩いてしまったことを死ぬほど後悔した。
状況は違ってても言う事を聞かない聖知を叩いてしまったことは事実で…あのババアと同じ事をしてしまった事に…
「あと…いきなり3年ぶりに会った父親から交際している彼氏といきなり別れろだなんて反発するのは当然よ…」
俺はそれから澄香に3時間くらい女心と年頃の娘への接し方など熱弁を聞かされた。