第33章 娘と父親
「聖知ッ…!どこ行くんだッ…こんな夜更けに危ないだろッ…!それに話はまだ終わっていないッ!」
「ほっといてよッ…!……どうせ私が悪いんでしょッ…でも…アメリカには帰らないからッ…絶対にッ…!」
「いいから戻れッ…」
「嫌ッ…!」
「ッ……」
ホテルから出るとお父さんが後を追いかけてきて腕を掴みホテルに引き戻そうとする。一度ついた火種は消えずに頑なにホテルに戻ることを拒むと夜更けで静まり返ってる中パチンと乾いた音が響いた。
「ッ………」
「ッ!……聖知ッ…わッ…」
お父さんに初めて頬を引っ叩かれてしばらく思考が停止し、目に涙を溜めて頬を押さえるとお父さんは慌てたように手を伸ばしてきてその手を払いのけて走ってその場を後にした。
ーー笠松視点ーー
部活を20時で切り上げて家に帰る中、頭に浮かんできたのは聖知のことだった。
俺には全く想像できねえが…3年ぶりに会う父親って…ほとんど初対面なんじゃねえかって思ったが……俺にはよく分からねえ繋がりがあるんだろうと思った。
俺の事も話すって言ってたけど……正直…父親としては良い気分には何ねえだろうなとこの時呑気に考えている中、家族が今週までいないため適当に近場で夕食を済ませた。
店を出てふと駅に目をやると父親といるはずの聖知が駅から出てきて走っている様子が遠巻きに見えて頭より体の方が先に反応して咄嗟に俺は追いかけた。
ーー笠松視点終了ーー