第33章 娘と父親
ーー瑛一視点ーー
聖知が……自分の話をするなんて……
信じられなかった………
俺は……娘には……嫌われていると思っていた。
夜遅くても毎日聖知のそばにいた…澄香より…
俺は……辛い時なかなか…側にいることが出来なかった……
後で知ったことだが……聖知はやはりあのババアに脅されていた。
俺の仕事の事…澄香の事……当時まだ子供だった聖知には…
黙っていることしか出来なかったんだろう……
何度聞いても、何をやっても…聖知は頑なに認めることはなかった。
だから…俺には関わりたくない……嫌われてると思いながら接していた中…
自分の気持ちを話してくれて………嬉しかった……
もっと話聞きたかったが……聖知が何を話ししようとしているのか…
明らかに……嫌な予感がする……
話している聖知の表情が今まで見たことないくらい…優しい表情を浮かべていて……嬉しい反面……それ以上聞くには勇気がいった…
とりあえず…飯に行こうと思い、改めて聖知に何が食べたいか聞いてみた。
「……じゃあ……オムライスが食べたい…」
「まだまだ……ガキだな…聖知は…ッ…」
一気に堪えていたものが溢れてくるのを感じた。
こんな……会話は久しぶり過ぎて…
もう2度と…できないと…思っていた…
昔…日本に住んでた頃…家に帰ると決まって何が食べたいと聞くと「オムライスが食べたい」とねだっていたのを思い出した。
情けない話……自分で聞いたくせに…
目から出てくる水のような雫を娘に悟らせないようにするだけで精一杯だった。
試合でも、練習でも泣いたことねえのに…
やっぱり…俺はつくづく親バカ…と改めて認識した…
娘が……聖知が……好きすぎる……
ーー瑛一視点終了ーー