第33章 娘と父親
「私…中学に入ってからは…
しばらくは…1人だったよ……涼太はいたけど…
他の人との距離のつめ方がわからなくて……
きっかけは…バスケ部かな……
最初にできた友達に勧められて入ったら…
すごく楽しくて…最初はぎこちなかったんだけど…
そのうち笑えるようになって……
高校に入ってからは…今はもっと楽しくて…
日本に戻ってきて良かったって思ってる…」
「………初めて……だな……聖知が…自分の事を…話してくれるのは……」
「そうだね………嫌だった……?」
「そんなわけねえだろ。でも…なんで急に話しようと思ったんだ…?」
「……私……考え方が変わったの…」
私は父に中学生だった時の話をした。
自分でも笑うことは一切しなくなったと思ってたし、楽しくもなかった。
中学生の時に笑えるようにはなったけど…心からは笑えてはいなかった。そんな中…1番私の中で大きな変化をもたらしてくれたのは…笠松先輩だ。
笠松先輩と出会って1人で悩まなくていいことや自分を犠牲にして我慢することへの間違った考えを正してもらってだんだんと自分の考え方や行動に変化が起きようとしているのがわかる。
私は父や母にも頼らなかったけど……もっときちんと話するべきだと思った…
自分の気持ちをちゃんと声に出して言うべきだと…
笠松先輩に出会えなければ……ここまで変えようとも思わなかったし、ずっと我慢してる生活を送っていたと思う。
「考え方……?」
「…うん……今こうして話ができているのは……ある人…」
「待て待て待てッ……ちょっと待て。落ち着け。」
私が話をしようとすると、父が話を遮る。
「何……?」
「いや…聖知が話しようとしてくれるのは…嬉しい…たが……順次を追って話がしたい……」
「……???」
「とりあえず……どっか行くか……今なら……ッ…何が食べたいか言えるだろ?」
「……じゃあ……オムライスが食べたい…」
「ッ……まだまだ……ガキだな…聖知は…ッ…」
さっきまでは緊張して気を使いすぎて何も言えなかった…けど…
言っていいのなら……
オムライスと言うと父は顔を逸らして窓の方ばかり見て車を発進させようとせずしばらく肩を震わせていた。