第33章 娘と父親
ーー瑛一視点ーー
マンションの前で聖知を待っていると部活が終わるには早い時間帯に聖知は帰ってきた。
恐らく、武内先輩が気を回してくれたんだろう。
聖知に話しかけると緊張した表情を浮かべているのがわかる。
3年ぶりだから…仕方ねえか……
車を走らせると何から話したらいいか考えていると、咄嗟に出たのは飯の話をするとどこにでもあるようなカフェを聖知は指差した。
まさか…いつも…軽食みたいなもので済ませてんのかと思っていると…
「……お父さん……何か私に聞きたいことがあるんでしょ?なら…話しやすい方がいいと思って…」
せっかく久しぶりに会えたのに…「早く用事済ませて帰りたい」気持ちがヒシヒシと伝わってきて中学入学の時から変わってないと思った。
それでも、俺はいつか聖知が俺に心を開いてくれるんじゃないか……
前みたいに笑ってくれるのを信じて車を停めて話しかける。
「…3年見ない間に…綺麗になったな。おかげで学校で見た時はびっくりした。……一人暮らしは楽しいか?」
この時俺は、聖知からの返答は「言いたくない」とか何も答えてはくれないと思っていた。自分で聞いててわかってるくせに…つい聞いてしまう…だが…俺が思っていた返答とは別の答えが返ってきた。
「………うん…楽しいよ。」
そう言いながら俺に小さく笑いかけた。
今……笑った……のか……?
前に中学の入学式では一切笑顔を見せなかった聖知がこの3年の間に笑うようになったのか……
「聖知……お前……今……笑った…のか…?」
「……笑ったら…いけない…?」
「そ…そんなことねえよ……そうか……いつから…その…笑えるように…なったんだ……?」
「……私を人形か何かと思ってるの……?」
「いや…違うッ……だからッ…ッ…」
「変なの…変な…お父さん。」
「ッ……///!」
俺は、聖知が笑うようになったのを見て嬉しくなり心境の変化について聞くと人形扱いされて不服そうな表情を浮かべ慌てて弁解しようとすると小1の時から見たことがなかったクスクスと笑顔を浮かべてる聖知を見て素直に可愛いと思った。
ーー瑛一視点終了ーー