第30章 アメリカーー過去編ーー
「おい、どけッ!…あのババアはどこだッ…聖知はどこにいるッ!」
「まったく…相変わらず言葉遣いが汚ない人ね…早朝から何の用かしら…」
「人の娘攫っといてよく言うな……聖知を連れて帰る…拒むならこっちも然るべき処置を取る…そして洗いざらい今まで澄香にやってきたことも告発する。」
「………瑛一さん…あなた何か勘違いしていない…?連れてきたのは私だけど…聖知は一昨日から楽しそうに勉強しているわよ……ここが好きみたいね……娘の意思を尊重しないのが貴方のやり方なのかしら……」
「そんなわけないだろッ……なら聖知に会わせろ……あんたが言うように聖知の意思なら俺も検討する……が…違うなら連れて帰らせてもらう…」
「いいわよ…ただし…もし…聖知がこの屋敷に居たいと言えば今後私の教育に口出しは許さないわよ…」
玄関のドアを蹴破る男が1人。
黒髪に青眼の青年が蹴破るように入りメイドや側近の制止を無視して澄香と一緒に屋敷へとやってくる。
妻である澄香から自分の娘が拉致されたと聞きキレて屋敷へと殴り込み近くでお茶を飲んでいる紅羽へと怒鳴り散らす。
聖知の意思の確認をするために聖知の両親である2人を応接室へと案内をする。
ーー如月家 応接室ーー
「聖知…!」
「…お父さん……」
「家に帰るぞ…もう嫌なことなんか何もしなくていい……」
「私……帰りたくない……ここにいる……」
「……は……?…何言ってんだ…」
「ほら…聖知はここに居たいのよ…貴方…子供の意思を無視して強行する気なの…」
「聖知…あのババアに言わされてるだけなんだろ……」
「違うッ……私が……ここに……いたいの……」
応接室に聖知が来ると父親である瑛一は聖知を抱きしめて一緒に帰ると話しても聖知は首を横に振り拒む。
その表情は暗く明らかに聖知の本当の意思ではないことがわかり何度も尋ねても首を横に振るだけだった。