第29章 喧嘩
「あの…行きたい所って…どこに行くんですか…?」
「…そんなに遠くねえし…着いたらわかる。」
笠松先輩と学校を出ると「行くぞ。」と私の手を引いて行き先も告げず歩き出し、しばらく歩いてどこに行くかわからないまま着いていくと広い公園へと入っていく。
「ほら…着いたぞ…まず、座れよ。」
「…あの…ここで…何を…?」
平日のせいか人がほとんどいなくて、笠松先輩は私の手を引いて歩いていくと近くのベンチで立ち止まると自分から座り隣に座るように促す。
隣りに座ると笠松先輩が公園で何をしたいか分からずに恐る恐る聞く。
「俺が、ここに来たのは…聖知の話を聞くためだ。ここなら…あんま人いねえし…話せるだろ…何があったんだよ…」
「……え……何の事…ですか…」
「火神と話してから明らかにおかしいだろ…何か…言われたのか?」
「…か…考えすぎじゃないですか…?普通の話を…しただけです…。」
「普通の話をして、泣きそうになるのか?」
「ッ……そんな顔してません…」
「いや…してた。」
「してません。」
「してただろ。」
「だからッ…してません!」
笠松先輩は火神君と話してから私の様子がおかしいのに気づいていた。
火神君には何も言われてない。ただ…私が昔の事を思い出して落ち込んでるだけ……
本当に笠松先輩は感がするどい…
落ち込んでる話をしたら…落ち込んでる理由まで話さないといけない…
幼少期の話は誰にも話した事ないし…涼太も知らない事。
私には…まだ…自分の家の話をする勇気なんてない。
たとえ…相手が…笠松先輩でも……
私は中々折れない笠松先輩に声を荒げるように言ってしまった。