第3章 入試
私の今までの人生はお分かり頂けたでしょうか?もちろんこんちゃんとは幼き私の事である。
わりとほんのり、仄かに壮絶だったのだが、別に傷付いても気にしてもいないのであっけらかんと生きている。
さて話は変わるが、私がなぜ雄英に行きたいのかの説明をしよう。
私の母親は、動物を操作できる個性を持っている。かなり強いらしく、そのため雄英高校ヒーロー科を志望していたのだがどうやら入試が合わなかったようで、巫女なのに経営科に入り学んだ。
母の無念を晴らす事が一つ。
そして、父親だ。
彼は今のご時世では少し珍しい、無個性なのだ。
しかし、父はヒーローに憧れた。何が何でも人々を救けるカッコいいヒーローになりたかった。
しかし無個性の人間にそんな事は出来る訳がなく、どこのヒーロー科にも入れなかった。涙を飲んで彼は新たな夢を見つける。
ヒーローが駄目なら警察になって、地味にでもいいからとにかく人々を救ける事にしたのだ。
邪な理由一切なしに人助けをして生きる事を望んだ父の話を知った時、幼き頃の私は猛烈に感銘を受け、燃え、また共に悔しがった。
父の無念を晴らす事が一つ。
私は今日、両親の昔の夢と私自身の人救けへの強い憧れを胸に、『ここ』に来た。
入試当日、他の受験生が続々と入りゆく雄英高校正門前。
来るだけでは意味がない。確実に受かって、3人の夢を叶えるために勉学に励むつもりだ。
胸に手を置き、深呼吸をして歩き出す。
門をくぐる前に、くるりと振り返って後ろでこっそり見ている両親に小さく手を振る。
まさか気付かれたとは思ってもいなかったであろう彼らがとても慌ててバタバタしているのを見て、少し落ち着いた。
落ち着くだなんて、やはり緊張しているんだなぁとぼんやり考えながら前を向き、門をくぐる。
いってきます。