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爆乳政治!! 美少女グラビアイドル総理の瀬戸内海戦記☆西海篇

第5章 悪意 中國山地


 休憩室に自分の言葉が広がったように感じた。つくづく携帯とはおかしな物だと兵介は以前から思っている。語弊誤解を差っ引いて、端から見れば完全に独り言、片言一人芝居なのだ。兵介にはまだこれを奇妙に思う素朴さが残されていた。

「…もしもし、わたしです。わかる?」

 番号を見ずにボタンを押したが、声色を兵介は知っている。

「宇山真綾、君だな」

「当たりです。良かった、いきなり切られなくて」

「一昨日会ったばかりだ。俺は健忘症じゃないぞ」

「わかってますって」

 律儀に言われた事に苦笑しつつ、電話越しに若い女は甘えた声をして兵介に絡んできた。

 宇山真綾(うやま まあや)。兵介より歳は若く、気ままに彼へと甘えてきた。物書きをしていると言うが、三流の度合いを抜けぬルポライターであり、実際は家計の足しする程度の稼ぎがある家事手伝いでしかない。そして、兵介にとっては「婚約者」という肩書を持った相手である。一昨日、休日に松江で食事をしたばかりだが、真綾は日に一度は欠かさず電話を掛け、週に一度は長電話で彼を拘束する。会う少し前から昨日まで、彼女は母親の腹の中にいる妹か弟の事を喜んで話していた。

 正直、毎日の電話は少しばかり鬱陶しいが、兵介は以前関東で魔が差して別の女と事を構えており、それ以来の行動確認に代えた甘えた長電話である。元はと言えば身から出た錆。止むを得ない。魔が差した事を悔いるか、或いは敢えて許した真綾に感謝すべきか、答えは言うまでもない。

「どう、お仕事?」

 真綾の声は、甘ったるいがよく浸みてくる。何故かよく気に残る。兵介には彼女の人となりよりこの声の印象が大きかった。

「ああ、もう終わる。今、息ついた」

「そう。お疲れ様です」

「何かあったのか」

「ううん。声が聴きたかっただけ」

「はぁ」

 兵介は愛想も無くそう言っただけだった。一昨日の食事の時に一通りの話はした以上、こちらから振る話題は特に見当たらない。寝食如何を共にしていれば所帯染みた事ではあろうが日々話す事もあろうが、互いに県境を跨いで逢う仲である。取り分けて別段用もない。冷たいようだが、今の山路兵介にはそれが精一杯である。

 尤も、それは兵介の事情である。真綾は彼とは違う。

「ん? 何か気のない返し」

 真綾は少し不貞腐れたかもしれない。兵介は声からそう思った。
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