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爆乳政治!! 美少女グラビアイドル総理の瀬戸内海戦記☆西海篇

第5章 悪意 中國山地


 革命後お尋ね者となっていた日共の幹部達が逃亡資金を得るために娘を売ったという事案は聞いていたが、実際の有り様を見るとやはり怒りが収まらないのが人情というものではある。

 宇喜多は歓楽街に足繁(しげ)く通う新興富裕層が日共幹部の逃走を支援していると聞き、大坂に黙って独自調査していたのだがそこで知り得たのは、親から憎め憎めと教え込まれた敵である客に貪り尽くされ、終いには取り返しのつかない身体になって歓楽街から厄介払いされた女達の無残な姿であった。

 無縁に堕ちたその者達の虚ろな目と摩耗し切った肉体。宇喜多は若い頃にアフリカで見た光景と酷似した実態に怒り狂った。所詮、この国の民でさえこんな物だ、と。

 結局彼も人の子であり、加えて、理念は兎も角としても、振るう手を欲しいままにする専制君主であった。怒りの儘(まま)に弟の将軍 浮田郷家と出雲党の豪傑で浮田の部隊にて大隊長を務めていた山路兵介に命じ、歓楽街を一斉に取り締まった。取り締まりを利用し、暴力分子を排除するという名目で、女衒(ぜげん)も客も寄生者達もヤリ手婆まで皆、殺した。宇喜多清真も側近達を連れて駆け付け、「清め」の炎が歓楽街を包み込む様を見届けていた。そして殺された客達の骸に鞭を打ち付けるために、詭弁虚言様々に駆使して、客達の資産を奪い取り、その名誉を悉く剥奪した。その一族達も徹底的に追及し、根絶やしにしてしまったのである。大坂はこの事実には一切関わらずにいた。知っても是認も否定もしなかった。宇喜多を恐れたのである。

 この時の彼は、極めて狂気的であった。それは彼が信仰するイスラムの教えに、ではない。単に己の理想にであった。国に帰って幾十年の時を経て、現実を前に封じるしかなかった青い理想は、偶然目にした非道を前に再び彼を充たした。失われた自らの在り様を不意に取り戻した主人が、三沢には実に恐ろしかった。これほどのものはない、と。三沢は軽口を叩いて彼と付き合いながらそう思っていた。

 理想ほど、仄暗(ほのぐら)き本質を示す物はない。理想ほど、正義を冠する凶気を生み出す物はない。

「で、どうする? 星川もやるか?」

 物思いに僅かに耽っていた所で、不意にかかった声に三沢は一瞬慌てた。

「ええ…っと、突然殴りかかるのも、アレですかな…?」

 宇喜多は怪訝な顔をした。
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