爆乳政治!! 美少女グラビアイドル総理の瀬戸内海戦記☆西海篇
第5章 悪意 中國山地
白皙の男、ジャルコ ゲリッチは少し楽し気な声だった。
「ああ、社(やしろ)が見えて来る」
「ヤシロ? ああ、神社の事か」
「そうさね。神社の『ジャ』は『ヤシロ』の漢字と同じだ。意味もね」
「なるほど」
新助は興味深そうにする目の前の馬鹿でかい背をした男を少し笑いたくなった。
「隊長の『ジャルコ』って名前はおヤシロの『ジャ』かな?」
「何を言っている?」
「ああ、忘れてくれ」
新助はユーモアのセンスを持ち合わせていなかった。
「着いた」
階段を登り切った。ジャルコ ゲリッチはそのままの勢いで社の所まで行った。浅黒の男、延原新助は階段の後方を見やって後続に早く上がるように手招きして、ジャルコに続いた。
「眺めは良い」
「そうだ。ここで敵を迎え討つ筈だったしな。結局、城の主である益田藤兼(ますだ ふじかね)は広島の吉川元春(きっかわ もとはる)に戦わずして下ったがな」
「益田は死んだのか?」
「いや。益田は吉川の親父だった毛利元就(もうり もとなり)って男はいろんな兼ね合いがあって藤兼を殺そうとしたが、吉川が命乞いをしたんだよ」
「なぜ?何か秘宝でもあったのか?」
延原は微笑んだ顔をして、横に首を振った。
「益田は使えたんだ。外交官としても使えたし、中華辺りと交易してたんで金があった。ここら辺一帯、そうだな、だいたい大田(おおだ)辺りまでを石見(いわみ)と言うんだが、益田はそこで一番デカい領主だったんだよ」
「ほう。最後はやはり金か」
「才覚もな。君と俺がここまでやって来れたのもきっとそうだろう?」
「随分と自信家だな、シンスケ」
「君ほどじゃないさ、ジャルコ。ま、君の場合名の知れた実績もあるしな」
延原新助はそう言いつつ、登り切った後続に目を遣った。
「マスダもシンスケのように自信家だったんだな。だから、降伏しても殺されないとわかっていた」
「そいつはどうだか。さっきも言ったろ?毛利は殺す気だった」
延原はそう言うと踵を返して社の方へ向かい、賽銭箱に腰を掛けた。ジャルコはそちらを向いた。
「すぐに座りたがるな」
「俺は尻が重いんだよ」
ジャルコは怪訝な顔をした。延原はジャルコの顔を見ていて、彼が存外正直な奴だと最近気付いた。