第1章 優しい人 (あんずside)
煌びやかなステージと流れる音楽…
とは反対のステージ裏。
出演者や関係者スタッフでごった返していた。
当然、私もスタッフとして慌ただしく動いていた。
今のところ、大きな問題も無く、
滞りなくドリフェスは進んでいる。
手元にあるタイムスケジュールを確認すると、
次のユニットはUNDEADーー
準備ができているかどうか、
確認のために彼らを探す…
「嬢ちゃんや。
準備はできておるぞい…♪」
彼らは、既にステージ袖に待機していた。
もちろん晃牙くんも…
4人全員揃っており、
衣装もメイクもばっちりだと伝えてくれた。
「頑張ってください…!」
「嬢ちゃんには世話になったのう…
さて…、夜闇の魔物の目覚めの時じゃよ…♪」
朔間先輩はそう言って、
ステージに出ていった。
歓声がより一層大きくなるのが聞こえる。
それに続いて、羽風先輩とアドニスくんも出た。
ーーー何故か晃牙くんは行こうとしない。
喋りかけたいが、どう声をかければいいか、
気まずくなってしまい、声が出ない。
会えなかった時は会いたいと思っていたのに…
「あんず…」
聞こえるか聞こえないかくらいの声。
とても真剣な眼差しで、
目を逸らせないくらいだった。
そして、今まで見せてくれた優しい笑みで、
「頑張るからよぉ…
応援しててくれねーか?」
ああ…
やっぱり晃牙くんのその笑顔は、
頭から離れないほど好きだよ…
「うん…! 応援してるよ。
頑張ってね…!」
私は精一杯の笑顔で見送ったーーーー