第1章 優しい人 (あんずside)
「あんずさまは、最近大神さまとご一緒しているようですが、
何か心当たりございますか?」
「………」
「あんずちゃん?どないしたんや〜?」
全然知らなかった。
私は気が付きもしなかった。
私だけが振りまわされていると思っていた。
「ごめん… ちょっと… 戻らなきゃ…」
いつものように小さめな声で言って、
その場から走って2-Bの教室を出た。
でもみんなは、
「いってらっしゃいませ、あんずさま。」
「あんずみたいな若い子はいいねぇ…♪」
「頑張れよ!あんず!」
「あんずちゃん、無理せんといてな〜」
「あんずちゃん!頑張るのよぉ〜〜!!」
何故かお見送りをされたけど…
そのまま走って、自分の教室に戻らず、
軽音部の部室前に着く。
コンコンとドアを叩いてから、中に入った。
最近はドリフェスも近く、
UNDEADのプロデュースをする事も多い。
だから、ココの部屋でプロデュースしたり、
リーダーのある人に資料の確認をしたり…
部屋にある見慣れた棺桶に近づき、
コンコン…
「朔間先輩… 睡眠中にすみません…」
応答はない。
しかし、そのまま続ける。
「あの… ドリフェスの事じゃないんですけど、
トマトジュースも持ってきてないんですけど…
聞きたい事があって…」
沈黙が流れる。
当たり前だ。
朔間先輩は自称吸血鬼で昼はーーー
「もしや… とは思うが、
わんこの事じゃな…?違うかえ?」
棺桶の蓋が開かれていく…
と同時に眠っているはずの朔間先輩が言った。
「よいしょ…っと…
トマトジュースが無いとは、
少し残念じゃのう。
代わりに嬢ちゃんの血を…
そんな顔をするでない、
これは冗談じゃよ♪」
びっくりした…
無理にこんな時間に起こしてしまったから、
怒りに触れてしまったのかと…
「で、わんこの話で合ってるかえ?
そのようじゃのう…♪
こうやって嬢ちゃんが、
わんこの相談をしてくれるのを
今か今かと待ち続けてたぞい♪」
何故、朔間先輩はなんでもお見通しなのか…
流石『三奇人』なだけあるなぁ…
「朔間先輩は晃牙くんとずっと一緒ですよね…?
最近何か違うなとかありますか…?」