第1章 眠れるリング
『よかったな、リド!』
ティーガが思いっきりリドの背中を叩く。
「いってーな…加減しろよ、お前は!」
『まぁまぁ、ティーガもずっと心配してたんだから、
大目に見てあげてよ』
サイが嬉しそうに目を細める。
「あ、あぁ…まぁその、悪かったよ…」
『ホントだよ。もうこんな水くさいことはナシだからな!』
『僕たち、ちょっと寂しかったよ、リド。
これからはちゃんと頼ってほしいな』
「ティーガ、サイ…。
あぁ。そうだな。お前らのこと、頼りにしてるよ」
みづき達が旅立つ日の朝、久しぶりに三人が揃う。
リドは、昨日の夕方、ティーガが慌てて駆け込んできた事を思い出していた。
ーーみづきが明日いなくなるぞ!ーー
唐突にそう言いながらティーガはリドの部屋に入ってきた。
毎日公務をしてるなんて嘘だった。
みづきが自分の記憶を取り戻せないと知った日からずっと、
リドは自分の部屋に篭ってただ時間が経つだけの日々だった。
渡せずにいるピンキーリングを眺めながら…。
『ほら、来たぞ。行ってこいよ』
ティーガがいち早くみづきの姿を見つける。
「え?お前達は?」
リドは押し出されてキョトンとしていた。
『僕たちは、後で見送りに行くよ。
今はみづきとリドで話しておいでよ』
サイも早く行けとリドを促す。
「あぁ…ありがとう。じゃあ、また後でな」
そう言うと、リドはみづきの元へと急いだ。
『せっかく思い出したのに、またお別れなんだね…』
サイが悲しそうな声でティーガに言う。
『仕方ない。あいつが時間を無駄に使っただけだ。
でも、あいつらなら大丈夫だろ。ほら』
二人の見つめる先のみづきの顔は、リドを見つけて幸せそうな笑顔を零していた。
『うん。そうだね。
僕たちも、ちゃんと笑顔で見送ろうね』
『あったり前よ!さ、俺たちは朝飯でもくってこよーぜ!』
そう言うと、ティーガとサイはその場を後にした。