第1章 眠れるリング
『リドに、本当に何も言わなかったの?あの日の朝とか…』
サイがリドに尋ねる。
「俺…前日からずっと気まずくて、朝も一言も話して無くて…
だから…あいつ…」
ずっと黙って聞いていたナビが、優しくリドの手に触れた。
「リド王子。あまりご自分を責めないで下さい。
姫は目覚めますから。大丈夫です。姫の指輪にはまだ光があります。
あれは、姫がまだこの世界への希望を持っている証拠です。
信じて、待ちましょう」
どこまでも透き通ったまん丸な眼が、真っ直ぐにリドを貫く。
不安に揺れていたリドの瞳にも、少し光が戻ったようだった。
その日から、アヴィとナビもサフィニアの城に留まることになった。
夜にはティーガもやってきて、本当なら賑やかになりそうな食事も、
どこか皆、お互いを遠慮しあっているような、
触れたら均等が崩れてしまうような、危うい雰囲気が続いていた。
みづきが眠りについて六日目の朝、
トトリが、アルマリとトルマリを連れてお見舞いにやってきた。
リドの様子を、サイとティーガから聞いていたからか、
アルマリもトルマリも、無駄に責めることはもうしなかった。
ただ、みんながベッドに集まり、ナビに撫でられてるみづきを囲んでいた。
『みづき〜、早く起きて、また一緒にオシャレしようよ…』
トルマリが、そっとみづきの枕元に、
綺麗な宝石をたくさん散りばめた髪留めを置いた。
「トルマリ?みづきは、少し疲れていたんですよ。
長い旅ですからね。疲れが取れたらまたいい笑顔を見せてくれますよ」
トルマリに微笑むと、トトリがみづきの手を取り、そっと手の甲に口づけをする。
「早く、元気になって下さいね」
その声は、どこまでも優しく、あたたかく響いた。