第4章 金木犀の香りを追って(BL)
頬を伝う汗を指で拭うと、赤葦がピクリと反応した。
んっ、と艶やかな声が小さく赤葦の口から漏れ出る。その薄い唇にそっと指を這わした。
「お、おい、お前ら! そういうのは裏行ってやってこい!」
俺と赤葦を現実に引き戻したのは、田中の裏返った声。田中は手足をバタバタさせて、俺達二人の姿を周囲から必死に隠そうとしているらしかった。
赤面しながらも、俺と赤葦は、その田中の挙動がおかしくて二人して噴き出してしまった。
蝉時雨の中で、俺は一歩、前に進みだした。
――隣に佇む、愛しい人と共に。
―Fin―