第15章 スモーキー・ブルース/烏養繋心
違う。
話すことを間違えた。
いや、間違えちゃいない、これも俺の本心だから。
ああ、どうしたらうまく伝わるんだ。
気持ちばかりが焦って仕方ない。
「…もう十分ですよ。言ったじゃないですか、私。もう付きまとわないって」
「最後まで聞いてくれ!」
思わず出た大声に、あたりがシンと静まり返る。
悪い、と一言つぶやいてから、今度こそきちんと俺の想いが彼女に届くように深呼吸をして気持ちを落ち着かせた。
「…俺にこだわる必要はねぇし、さんの貴重な時間を俺がもらっちまっていいのか、正直分からない。
だけど、俺は今、アンタにそばに居てほしいと思ってる」
さんの反応は無い。
それが拒否からなのか、まだ俺の言葉を受け止めきれていないからなのか、理由は分からない。
「…俺も大概、ワガママだろ? あんたの望みを叶えてやれるのか分かんねぇのに、一緒にいたいだなんてよ」
「……そ、れは、つまり……」
ハッキリ、言葉にしろって事か。
今まで曖昧にしてきた分、確かな言葉を求める気持ちはよく分かる。
彼女の気持ちに応えるように、俺はゆっくり言葉を紡いだ。
「……俺の、彼女になってくれねぇかって事だ」
3拍ほどの間があいた後、さんの目からボロボロと涙がこぼれだした。
顔を覆って泣き出した彼女に、俺はうろたえてしまった。
そりゃ都合のいいことを言ってるとは思う。
今まで自分がしてきた仕打ちを考えても、手のひら返しもいいとこだと思う。
だけどまさか泣かれるとは思っていなくて、どうしたらいいのか分からなくなった。
「すまん、勝手なこと言ってるのは分かってる」
だけど、やっと自分の気持ちと向き合えたんだ。
もう愛想が尽きたってんなら、俺も潔く身を引こう。
だけど、もし、ほんの少しでもまだ望みがあるのなら。
「いえ! いいえ!! 繋心さんは全然勝手じゃありません。むしろ…むしろ、ちゃんと私に向き合って、答えを出してくれたと思ってます。……だから、ぜひ、私を繋心さんの彼女にしてください」
「……っ、お、おう……」
頬を伝う涙をぬぐってやると、真っ赤な目をして嬉しそうにが微笑むものだから、たまらなく愛しく思えた。
──fin──