• テキストサイズ

ハイキュー!! まとめ

第15章 スモーキー・ブルース/烏養繋心



いや、そんなはずねぇ。

考えれば考えるほどイライラしてきて、自然とタバコに手が伸びた。

「……ったく、どうすりゃいいってんだよ」

吐き出した煙が、壁にぶつかって形を変える。
ハッキリとした形を保てない煙は、まるで俺の今の気持ちみたいだった。


ゆらゆら揺れて消えていくだけで、掴もうとしても掴めやしない。

「本当にお前にその気がねーなら、ちょっと怖い思いさせてでも諦めさせたら?」

滝ノ上の提案を聞いて、先日の車内での出来事が脳裏に浮かんだ。

今にも手を出してやらんばかりの目をして、押し倒しかけたというのに、さんは怯むどころか斜め上の発言をしてのけた。

そのことを思い返すと、またこんなことで悩んでるのが馬鹿らしくなってくるんだから、不思議だ。

「……脅しも効かねーよ、アイツには」

困った顔で煙を吐く。
ゆらゆら漂う煙はやっぱり不定形なまま、どこかへ消えていった。


*************

「行成、ありがとな」
「おやすみなさい」
「おやすみ」

行成に車で家まで送ってもらった時には、時間はすでに深夜を回っていた。
あたりはひっそりと静まり返っていて、虫の声だけが時折聞こえる。

店の前から家の玄関の方へと周り、鍵を取り出そうとポケットに手を突っ込んだ。

「ん?」

いつもなら突っ込んですぐ硬い鍵の感触にたどりつくのに、今日はいくらポケットの中を探っても何もない。
反対のポケットも、パーカーのポケットも探ってみたものの、鍵はどこにも見当たらなかった。

「マジか……忘れてきたのか?」

玄関のドア開けようと試みるも、結果は予想通りでピクリともしなかった。
家の中はしんと静まり返っている。
こんな時間だ、母ちゃんももう寝てしまっているだろう。

家に電話をかけて母ちゃんを起こすか、携帯で誰かを呼ぶか、どちらにしようか考えていた時だった。

カチャリと玄関の鍵があいて、カラカラとゆっくり玄関が開いた。

「…おかえりなさい」
「帰ってなかったのか?」

玄関から顔を出したのはさんで、まさかそこにいるとは思っていなかったから、驚いてしまった。

「あの、こんな時間までいるのは失礼だと思ったんですけど……」
「…まぁいいや。とりあえず上がらせてくれるか」
「あっ、はい」



/ 299ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp