第2章 栗より甘い、/青根高伸
「良かったなぁ~。楽しんできたようで何よりだなぁ、青根くん?」
「……?」
「なんでそんなにニヤニヤしてんの?二口」
青根とは二人して俺の言動を訝しんでいるようだった。
これがニヤニヤせずにいられるかっての。
いい話のネタになるってことを、こいつらは分かっていないらしい。
「いんや~?べっつにぃ~?良かったじゃん、ラブラブで」
「!!」
「えへへ」
照れ笑いするよりも真っ赤な顔で、今にもショートしそうな青根を見たら、また噴き出してしまった。
どうやら青根は無意識に惚気てしまっていたようだ。
に対して緩んだ気持ちを、外では締めるというのを忘れてしまったのかもしれない。
この二人を見ているのは、ほんっと飽きない。
面倒くさいことに巻き込まれることも多いけど。
「にしてもさぁ、こんなにもらっても食いきれねぇよ」
紙袋を覗き込んで、再度栗の数を確認する。
5~60個はありそうだ。
特別栗が嫌いなわけじゃないが、好きでもない。
こんなに量もらってもどうしろって言うんだ……。
「それでも結構減らしたんだけどね」
「マジかよ……お前らどんだけ栗拾ってんだよ。業者か」
「……(ふるふる)」
「いや冗談だから、青根」
「あはは」
俺の軽口に青根は真面目な顔をして首を振る。
それを見てがお腹を抱えて笑い出した。
いや笑いごとじゃないんだけど、。
マジでこの栗どうしたらいいんだ……。
目の前の幸せそうな二人に手渡された紙袋を見つめて、俺は朝から途方に暮れた。
幸せのおすそ分けとでもいうのだろうか、紙袋の中の栗はとにかく重かった。
惚気全開のこいつらの幸せ分、重いような気がして、ちょっとだけ腹が立ってきた。
……お前ら一回爆ぜろ!栗ごと爆ぜろ!
そんな俺のむなしい心の叫びは、青根とには届かなかった。
おしまい