第10章 これからの話をしよう/天童覚
「あれ、もしかしてキスして欲しくてわざと黙ってたり、する?」
「……っ!そんなわけ…ないでしょ。天童君が返事する時間くれないから…!」
「でもキライじゃないよね? 俺とのキス」
「なっ……何を言って…」
自分でも真っ赤になってるのが分かった。
顔が異常に熱くて、背中には汗までかき始めていたから。
「だっ、大体、天童君おかしいよ。これまで話したこと無かったのに、あの、あんなことして、今だってこんな」
「ホント、ちゃんのその困った顔、カワイイ。テンパると語彙減っちゃうのも、カワイイ」
「あのね、私は真面目な話を…!」
一生懸命に訴える私を面白そうに見つめていたかと思うと、天童君は急に手を伸ばしてきた。
くいっと顎を持ち上げられて、口をふさがれる。
さっきまでは目を瞑っていたけれど、今はあまりに急な出来事だったから、私の目は丸くなったまま、眼前に迫った天童君を映した。
伏せられた睫毛が、ゆっくりと私の肌を擦る。
唇はひっついたまま、天童君と目が合った。
さすがに恥ずかしくて、天童君を力一杯押して、距離を取る。
近くにいたらまた唇を重ねてきそうで、彼が動く度に体がビクッと反応してしまう。
「結果が全て、デショ。語り合うなら、これからの話をしようよ」
ニッと笑みを浮かべる天童君に、私は何も言えなくなってしまう。
これから、君とどうなっていくんだろう。
恨めしそうな顔をしながらも静かに頷いた私を見て、天童くんは満足そうに笑っていた。
ーfinー