第7章 走れサンタ!/二口堅治
その後無事にバイトを終え、報酬とともにケーキの箱をひとつ抱えて二口はと二人、白くなった歩道を歩いて行く。
途中、先ほど恨めしく眺めていた大きなクリスマスツリーの前に来ると二口の足がぴたりと止まった。黙って止まってしまった彼氏の顔を不思議そうに眺めるを、二口は黙ってツリーの横の台まで引っ張っていく。
「なに、にろちゃん」
「折角だからこれ書いて帰ろうぜ」
差し出されたピンクのハート型をした短冊を受け取ると、はさらさらとペンを走らせた。迷いのない彼女の様子に、二口は嬉しくなった。彼女が書いた内容が、自分が書いた内容と寸分違わないものだったから。
『来年も、二人で過ごせますように』
が同じ願いが書き込まれた短冊をリースにくくろうと場所を探すも、彼女の手の届く範囲には空いている場所はなさそうだった。
ちらりと二口に目をやると、彼は微笑んでの手から短冊を受け取った。
が到底手の届きそうにない高い場所に、二口はいとも簡単に短冊をくくりつける。その様子を、まるで賛辞をおくるかのような表情で、が眺めているものだから、二口の頬は緩んでいってしまった。
「な、なに?? なんでそんなにニヤニヤしてるの??」
「いや、なんでも。ただ、可愛いなぁと思って」
「っ、なによ、にろちゃん。にろちゃんだって、カッコイイよ?!」
「なんでちょっとキレ気味なんだよ」
傍から見たら俺らもクリスマスに浮かれるバカップルにしか見えねぇな、なんてことを思いながら、二口は照れるをぎゅうっと抱きしめたのだった。
――May your Christmas be merry and happy.――
楽しく、幸せなクリスマスでありますように。
おしまい