第1章 rain of dirty
「・・・・・」
寝息を聞くこと自体とても貴重に感じる。
長い睫毛に閉じた瞳。
開眼すればその眼差しはものすごく鋭いけれど、今だけはそうは思えないようにナッシュは眠っている。
「・・・・・」
「ん・・・・・」
深夜、外は雨が降っていた。
そろそろ呼び出される頃だろうなとは思っていた。
いつ鳴るか分からない自分の携帯を横目に抱く想いは、早く会いたいという気持ちと、連絡など来なければいいのにというふたつの気持ち。
どちらも本音だったからもどかしいばかりだ。
日付が変わる頃、そろそろ眠ろうとベッドに向かった瞬間、名無しの電話は音を奏でていた。
夜も遅く・・・そんな時間に来いと言われたのは今までで初めてだった。
彼の部屋に出向いて、夜深くまで好きなようにされ、いつも以上に自分の喉も枯れたように感じる。
行為が終わってナッシュがシャワーを浴びている最中に気付いたのは、自分の携帯で何気なくネットニュースを見た時だった。
翌日の天気は終日雨予報。
ああ、暇を持て余すゆえ夜のうちから呼び出されたわけか・・・と、名無しは一人素直に納得し、自分が如何にナッシュに落ちているか、その自覚を改めて噛み締めた。