第1章 覚醒
脳裏に、記憶の波紋が広がる。完全には思い出せないけれど、この猫たちが私を守ってくれる『術』だということだけ思い出すことが出来た。
「………思い出せないけど、わかった。あれは、私が倒さなくちゃいけないのよね」
ひとつ、深く息を吸って深呼吸。
(大丈夫、きっとこの子達は応えてくれる。きっと今までそうしてきただろうから)
「――――お願い、あいつを倒して!」
そう彼らに言った途端、猫たちの身体がまばゆい光と桜の花びらと共に包まれたかと思うとその姿は人型へと変わっていった。
「……!」
「さ~て、主の『主命』もいただいたことだしやりますか!」
「…今回はあなたが隊長ですか、不安ですね。油断は禁物ですよ」
「大丈夫だって。うちの本丸の粟田口唯一の脇差だもん、これくらい軽い軽い」
「……余裕」
「ふむ、主様の命であれば何でも果たしましょうぞ」
「僕達が相手をするから、彼女を安全なところへ匿ってくれ。頼んだよ、お小夜」
「…任せて」
酷く跳ねた青い髪の少年は、紫色の青年に頷いたかと思うと私のほうへ走って手を取り「行こう。きっと加州たちなら大丈夫」と呟き、敵の反対方向へと走りだした。
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「……ここまでなら大丈夫かな」
「はあ…はあ…」
彼は確か「お小夜」と呼ばれていただろうか。その少年とある程度離れた場所へ逃げた私たちは、人目の少ない別の路地裏で休むことにした。
「ごめん。……疲れたでしょう」
「だ、大丈夫です。ありがとうございます、お小夜さん」
「……名前、言っていなかったね。僕は小夜左文字。復讐に魅入られた左文字刀派の短刀だよ。僕のことは、小夜でいいから」