第3章 ホットミルクと夢
禁欲なんていえば聞こえがいいが、ユーリと付き合うために、
女遊びはやめていた。
自分が感じていた醜い生き物になりたくなかったから。
でもよそよそしさがどんどんと拒否に変わっていった時に、
それが爆発した。
愛されようなんて事自体が間違っていたのだ。
ユーリへの恋心を忘れたくて毎日のように色んな女と遊んだ。
もちろん快楽を得る事も多々あったが、どれも虚しさばかりが増して。
そんな時決まってこの光景が浮かんでくる
ユーリはまともに育ったわけではないからか、感情に疎い。
そして不眠な気があるのか、夜中に起きて広間に来る。
今が無くなりそうで怖いと泣きそうになりながら、
その時だけは《兄さん》をつけずに俺のことをおそ松と呼ぶ。
それがなんだか嬉しくてくすぐったくて。
俺が自らホットミルクを作ってやると嬉しそうに飲んで
ニコニコしている。
「なぁ、俺の恋人になれよ。」
いつものように言うとユーリは決まって
「あたし、おそ松とずっと一緒にいたいなぁ…」
そういって遠まわしに恋人にはなれないっていう否定?
それでも俺の腕の中で俺に必死にしがみ付いて夢の中に落ちていく。
柔らかく微笑みながら。
これだから俺はどんなに忙しくても屋敷に帰る。
ユーリのために、自分のために。
どんなに忘れようとしても、
温もりも
重さも
表情も
匂いも
声も
全部…思い出してしまうから…。
今日も俺は俺を知らない女の所に行く。