第3章 怖いほど。
夕食を食べ終わるとこっそり薬を飲むのを知っていた。
誰もいない台所で、泣き崩れているのも知っている。
ナルトは夕食を食べると、お弁当をもらって帰っていく。
それさえ慣れたようで少し羨ましいとおもった。
彼女との習慣がまだ何も無い自分にとってはそんな些細なことさえ羨ましく思える。
静まった玄関、は冷えますねとだけ言って何も言わない。
茶の間にとも、お部屋にとも。
それがある種彼女との習慣なのかもしれない。
必要以上頼りもしなければ、言うこともない。
茶の間に行くと後片付けをしていた、そっと隣に立つと驚いた顔をして固まる。
「旦那様?お水ですか?」
「手伝うよ」
「そんな!!旦那様は明日も任務でしょうにゆっくりとお過ごしください」
「つれないね」
これでもかというぐらい目を見開き、乾いたタオルを悔しげに差し出す。
つい笑ってしまう。
かちゃんかちゃんと食器が重なる音が響く沈黙を破ったのはだった。
「旦那様は少しおかわりになったのですね」
「んー?どこら辺?」
「今、こういうものとか。昨日のように掃除を手伝って頂いたり」
「…そうかもしれないね」
「人はいいですね、何度でも変われて素敵です」
は嬉しそうに微笑む。
その横顔がどこまでも眩しくたおやかな時間にくしゃりと髪の毛を撫でた。