第1章 泣き虫な子。
鎖は四肢に、狼の耳と尻尾をつけ、客をとったり従業員と寝る。
嘔吐物のようなご飯をもらい、ただ、名前を呼ばれるのを待つだけ。
「あの娘はそれを、選んだ。」
ひらりと数枚の投げ捨てられた文は、とのものだった。
「その話の中に本物はあるのか?」
「……見た限りではひとつも」
「だろうな、そんなもので相談役を騙されやしないむしろ逆効果だ」
「いつから…です、か」
「二年と少し前からだよ」
文には嘘ばかりが連なっていた。
読むだけで微笑ましくなるような、夫婦の生活。
まるで、クシナとミナトの生活のようだった。
どんな顔をして書いていたのか。
仕方ないの。
私は。
化け物だから。
仕方ないの。
木ノ葉に居場所はないから。
仕方ないんです。
『お前は、ここから生涯出てはならぬ』
ダンゾウ様の言葉。
あの時は絶望に感じた。
けど、今なら愛だと理解できる。
護られていた。
とても、温かく。
とても、大切に。