第1章 泣き虫な子。
「どういう意味かな、それは」
「綱手様が、庇いきれなくなったので根に帰還しろとのご命令と共に同封されてきました。離婚届け」
この間貴方が届けてくれた手紙。
「テーブルに置いてあります。」
振り返り、頭を下げる。
「今まで大変お世話になりました」
「綱手様からの手紙見せてもらえる?」
「そちらも、テーブルにあります」
本物かどうか目を疑ったから。
確認の文も飛ばした。
本物だった。
彼の足首には同じ鎖、指にも同じ指輪。
もう、希望は無くなった。
月明かりでさえ目が眩む。
「度重なるご迷惑をお許し下さい」
畳を汚す黒。
この人に私の声は届かないのだから。
じゃらり、カランと、解かれた鎖と指輪。
指には指輪の跡がついていた、何度か撫でる。
簡単には消えなかった。
簡単に消えた。
「はお前になんて」
「根に戻ると」
「そうか…解った」
五代目は目を丸くして額を押さえた。
「違う、のですか?」
「あの手紙にはな、文を計三枚つけた。頭の良いあの子だどちらが本当分かったのだろう。だから、お前が考えるあいつの方を選んだ。」
「……どういう意味ですか」
忘れてくれと、呟く。
真っ白い雪が降り積もる。
思い出すのは無造作に散らばる白い髪の毛。
痛みを感じているように髪を切りながら痛むよう泣いていた。
「はぁ、今夜も冷える」
責め立てるように名前を呼んだ。
「綱手様」
「遊郭の見世物小屋だ」