第12章 やっぱり。
泣くばかり。
声も上げず。
ただ、泣いていた。
ダンゾウ様の隣で泣いていた。
「⋯」
「外は⋯もう嫌です⋯凝りました⋯」
「⋯そうか」
「人は⋯⋯怖いのです⋯⋯⋯私は外では⋯生きられないと⋯実感致しました⋯ごめんなさいダンゾウ様⋯御迷惑をお掛けしました」
何も言わなかった。
ただ、優しく頭を撫でてくれていた。
その手が温かく、その手だけしか彼女に残されていなかった。
心がもう、耐えられなかった。
知ってしまった幸せ。
それは孤独と寂しさを鮮明にさせ、平気だった迫害さえ酷く心を傷つけた。
幸せとは世界を変えてくれるいいものだとしか彼女は知らなかった。
何故こんなに心が痛むのか。
何故こんなに人が怖いのか。
理解するには恐ろしい事ばかりあり過ぎて、今なのか過去のことなのか、それさえめちゃくちゃになっていた。
真っ白の狼は、非戦闘員を傷つけたとして、根に帰還した。
それさえも彼女には理解できず、ただただ、後悔した。
護って欲しかったわけじゃない、けれど、これ程までに自分は何も出来ないのだと、自分を守る事さえ許されることでは無いのだと実感した。
泣きつかれた人狼はすやすやと毛を撫でる手に安心感を貰い眠る。
あぁ、久しぶりに眠る。
安心出来る、もう、何も考えなくて良い香り。
男は目を閉じた。
馬鹿な程素直で純粋で利口で、愛おしい程無垢で美しい。
誰も叶えられない願い。
ただ、普通の女の子の様になりたい。
そんな願いなど、誰一人叶えられる筈はないのだから。
それでも、夢を見た。
希望と幸せを見た。
この娘はそんなものに耐えられるほど、人らしくはない。
それは、ダンゾウだけが良くわかっていた事だった。