第12章 やっぱり。
イタチは目を疑った。
鎖をゆるくされ、大きな狼がダンゾウの足元に伏せて眠っていた。
何故、が、そこに居るのか。
何故、が、獣の姿をしているのか。
何故、自分に話しかけないのか。
ダンゾウは当たり前のように彼女の鬣を撫でていた。
「元を辿ればお前達が悪い、何をそう不思議がる」
「は、い?」
「監視を止めた数日後、空き巣に強姦され翌日から何処からか人狼を見世物にしようとした奴らが家を昼夜問わず訪れた。何故監視を解いた」
「っ!」
「普通でない獣人を普通で居られるようにするための監視ではなかったのか」
「⋯⋯」
「サクモの責任もあるが、監視の任を解いた綱手にも問題はある。は、外には出ん」
イタチは拳をきつく握った。
それを教えるためにわざわざ呼びつけたのか。
外では人狼が暴れたと、騒ぎになっていた。
「その、空き巣等は」
「始末した、何、死んでも困らん連中だ」
「⋯そう、でした、か」
この人はそうだ、が唯一全てを預ける、考えることも探ることもしないで身一つ投げ出す人。
「⋯⋯、カカシさん⋯助けてあげてくれ⋯お前が⋯元気になってからでいいから」
近づくとは喉を鳴らし後ずさる。
自分を守る事さえ許されなかった事はどれだけ心に傷をつけたのだろう。
「、人間は狡賢い生き物だ。誰もが自分勝手で、醜い、それだけではないから人間はには尊いものに見えるんだろう」
真っ白の毛のように、無垢で優しいだけの生き物。
そんな生き物は人間とは違いすぎる。
分かっていても、誰もが、護りたくて、愛おしいと感じた。
が人間に優しくされた事を宝物のように愛して憧れるように、自分もが人間に憧れ優しくされたことを簡単には忘れられなかった。