第10章 嫌われるのが怖いだけ
それを蛍に見せると
「それで由佳がいいなら僕はそれでいいよ」
「あっ、蛍はピンクだよ?」
「は?なんで」
「何でもです!!」
蛍は不本意な顔をしていたけれどそのままにしておいた。
「仲いいねぇ~付き合いたてかい?」
なんて店主に言われたけど返す言葉がわからなくて
ただ笑うしかできなかった。
そのままずっと手を繋いでバスも電車も乗ったけど
地元の電車になったから繋いでいた手を離した。
神様からのチャンスはもう切れたのだ。
普段通りのふたりで
帰路に着いていると急に
「月…キレイだよ。」
って蛍が言うから…。
空を見上げたらとてもきれいな三日月で。
そうだよね…そんな訳ないよねって思いながら。
せめてって
「…星がキレイだよ…」
月がキレイより有名じゃないけど、伝わればいいなって。
「僕は…ホントに好きになった人には結構、嫉妬深くて、独占欲も強いみたいでさ。自分のカノジョはきっとかなり束縛しちゃいそうなんだよね。」
「へぇ~意外だね!ふふ。蛍そんなの全然気にも留めない感じなのに」
「どうせ、気持ち悪いって思ったんデショ」
「そんな事思う訳ないでしょ。その彼女さんは幸せな子なんだなって思っただけだよ」
「は?なんで?束縛されてるんだよ。ふつー嫌でしょ…」
「それだけその人が好きなんでしょ?それだけ大事にされるんだからいいじゃん…あたし…」
急にこんな話どうしたんだろう?
潔子さんとの仲を取り持ってほしいってことなのかな…。
嫌だな。あたしの方が蛍の事好きなのに…。
マンションに着いてしまった。
やっぱり神様のチャンスを逃したあたしには
もう伝えられないんだな。
「蛍!今日はありがとう。楽しかった…。いっぱい願うから…。おやすみなさい蛍…」
走ってエレベータに乗った。
蛍の言葉が怖かったから。
潔子さんの事言われたら
きっと我慢できなくて泣いちゃいそうだから。
あたし頑張って願えるようになるから…。
それまではもう少しだけ時間をください。
もうすこしだけ曖昧にさせておいてください。
この恋を灰色にしておいてください。