第8章 月が意地悪に笑う
その夜久しぶりに地元を思い出したからか寝付けず、
いっそのこと外で頭を冷やそうと思った。
自販機で飲み物を買おうと近くまで行くと
大きな影が動いて
よく見ると蛍っぽい…。
「け…い…?」
「そうだけど?何か飲むんデショ。何飲むの?」
「え?えっと…レモンティー…」
レモンティーを手渡されありがとう
とお礼を言うと、またあの顔の蛍。
きっとあたしじゃない誰か…潔子さんを見ているんだろう。
「蛍も寝れないの??」
「そう。一回起きたら寝付けなくなったんだよね。」
「ねぇ、どうせ眠れないなら昔話を聞かない?対して楽しい話じゃないんだけどね…。暇つぶし位にはなるかも…?」
話したくない内容だけど、蛍なら…。
蛍に自分の全部を知ってもらいたいっていうのもある
「昔話?いいよ。聞くくらいの時間はあると思うし…」
自販機の近くにあるベンチに二人で腰を掛けると、
月が意地悪そうに笑っているように見えた。