第8章 月が意地悪に笑う
今日練習の休憩中、
蛍はいつもより楽しそうに潔子さんと話していた。
ニコニコ話すタイプではないけど、
あれはきっと楽しんで話しているんだろうと
思うような表情で。
なんとなく分かってはいた。
潔子さんみたいな人がタイプなのも、
蛍みたいな人に似合うのも潔子さんと言うことも…。
どっかでわかってたけど見ないようにしていた。
その日の広間で
「なぁ~!由佳~!!こっちに入学の時に引っ越してきたんだよな?前はどこに住んでたんだ??」
日向が何を思ったのか急に聞いてきて少し怖くなりながら…
「神奈川だよ。湘南に住んでたの。」
「うぉぉ!!かっこいいな!!!オレも言ってみたい!湘南に住んでるんだ!って!」
「おい、日向!湘南もいいが、横浜って言った方がかっこよくないか?!」
「おー!!横浜かっこいいな!でも横須賀もかっこいいぜ!」
「…バカじゃないの…。」
田中さん達の話を聞いていた蛍が一言言うと
三人から睨まれていたけれど、
蛍は気にも留めてないようだった。
「なぁなぁ、由佳~夏休み、みんなで湘南に海水浴行こうぜ!カッコいいから!」
「かっこいいかな…?あたしはいいや。それに海って海水浴だけじゃなくて、貝探しもおもしろいんだよ!この時期ならまだあるかも?桜貝が!」
「なんだそれ?!さくらがいってなんだ?!」
「え?日向知らないの?桜貝ってピンク色の小さな貝でね、持って帰ると幸せを運ぶんだよ!」
「マジか!!ピンク色の貝何て見たことないぞ!」
「オレも見たことないな!大地と旭も見たことないべ?」
「確かにないなぁ~…」
「オレも…」
「え~!地元ルールってやつですかね?結構落ちてるけんですけど。でも脆くてすぐ割れちゃうんですよ~」
みんな知らないなら地元ルールだったのかもしれない。
大地さんがそろそろ寝るぞー!と声をかけ、皆自分たちの部屋に行った。