第8章 【甘】幼馴染みのその先/轟焦凍
「そんなに親父に一泡吹かせたきゃ、ヒーロー科に来れば良かっただろう。」
オジサンの個性を引き継いだ遥香の個性はヒーロー向きの個性。身体能力も低くは無い。にも関わらず、入学したのはサポート科。遥香が雄英を受ける事は知っていたし、てっきりヒーロー科を受験するもんだと思ってた。成績だって、どちらかといえばいい方だ。ヒーロー科の入試だって難無く受かっただろう。
「プロヒーローになってエンデヴァーを追い越すのは焦凍だもん。私は、焦凍のサポートがしたかったから。だからサポート科。」
「俺一人の為に自分の人生を棒に振るな。」
「私がそうしたいと思ったからそうしてるの。今はまだ大したサポートアイテムも作れてないけど、卒業までに凄いの作るんだから!だから、焦凍もエンデヴァーなんか捻り潰しちゃうような強いヒーローになってよね。勿論その時は私が発明したアイテムつけて!」
屈折の無い真っ直ぐな笑顔。自分の為なんて言うけれど、遥香の根本にあるのはいつも俺だった。それが俺のもう一つの支えであり、俺が腐らずにいれた一番の理由だ。
「お前は変わらないな。」
「焦凍は変わったね。」
「…そうか?」
「うん。前より人間っぽい。」
「どういう意味だ?」
「そのまんまの意味。後ね、カッコよくなった。泣かなくなったし。」
「それは昔の話だろ。」
「昔はさ、エンデヴァーに怒られる度に泣いてたよね。それを見掛ける度にエンデヴァーに食ってかかってたなー。子供の時はエンデヴァーをヒーローって思ってなかったしさ。焦凍を虐める敵(ヴィラン)だと思ってた。だってさ、アイツ、焦凍にも私にも容赦無かったじゃん!」
てっきりまた昔の事を思い出し怒り出すかと思えば、声のトーンは段々と落ちていった。