第7章 【裏】気が付けば、いつも視線の先に君がいた/赤葦京治
「あれ?赤葦くん、まだ残ってたんだ?」
部室で部日誌を書いていると、少し前に木兎さん、白福さんと三人で帰って行った筈の逢崎さんが戻ってきた。
「あ、部日誌私も手伝うよ。」
「いいよ。逢崎さん慣れない部活で疲れてるだろうし。」
「そんな事言ったら、ずっと練習してる赤葦くんの方が疲れてる筈だよ。赤葦くんが迷惑じゃなければ、私も手伝わせてもらいたいな。」
そこまで言われ断る理由も無く、了承すると、向かい側に座り、部日誌を覗き込む逢崎さん。
「これって主将が書くもんだと思ってたけど、うちは違うんだね。」
「いや、本来なら木兎さんが書くべきものなんだけど、あの人こういうの向いてないから。字も豪快だし。読めたもんじゃないから。」
そう言ってページを遡り、木兎さんの記載した部日誌のページを見せれば、行を無視して豪快に書かれた文字列を見て逢崎さんは木兎さんらしいと言って笑った。目の前で笑ってくれているのだからそれで充分な筈なのに、木兎さんを思い浮かべ笑う逢崎さんを見て、ここにいない木兎さんに対し嫉妬心を抱いてしまう自分に溜息が出た。ただ見てるだけで良かった筈なのに、今まではそれで事足りていたのに、去年同じクラスだった時よりも一緒にいるせいか、抑えていた気持ちが溢れていってるような気がした。