• テキストサイズ

【WJ】短編 -2-

第7章 【裏】気が付けば、いつも視線の先に君がいた/赤葦京治


「木兎さん!さっきのスパイク凄くカッコよかったです!」


 後輩であり、マネージャーでもある逢崎さんにそう声を掛けられ、いつも以上に調子のいい木兎さん。そんな木兎さんと逢崎さんを見ながら、消化しきれないモヤモヤとした感情を抱きながら、二人を見た。
 逢崎さんがバレー部に入部して早い一ヶ月が過ぎようとしていた。マネージャーの後釜が居らず、三年生引退後は白福さんと雀田さんに任せていたマネージャー業務を一年で分担し行うと監督と決めた矢先、去年同じクラスだった逢崎さんがマネージャーとしてバレー部に入部した。なんでも、中学の時は三年間バレー部のマネージャーをしていたらしく、その噂を聞きつけた白福さんと雀田さんが勧誘したのがキッカケらしい。


「逢崎さん、木兎さんが調子良さそうな時は別に褒めなくていいよ。」
「あ…ごめんなさい。」


 去年同じクラスだったと言っても、特別親しかった訳では無かった為、逢崎さんと言葉を交わしたのは数える程度だった。その為、逢崎さんが中学時代バレー部のマネージャー経験があった事も知らなかったし、それを知ったのもつい最近の事だった。けど、そんな一クラスメイトでしかない逢崎さんをいつも目で追っていた。大人しくて自己主張も特にしない彼女だったが、何事にも一生懸命であった彼女を気が付けば目で追っていた。勉強にしてもそうだし、学校行事も真剣に取り組んでいた。球技大会のハチマキを全員分縫ったり、文化祭の準備も誰よりも遅くまで残ってやったりと、特に目立つ訳ではなかったが、逢崎さんの物事に対する真っ直ぐな姿勢に好感を持っていた。
 そんな彼女がバレー部に入部した事を独りでに喜びはしたが、木兎さんに構いっきりで面白くないというのが現状。別に俺も逢崎さんに褒められたいとかそういうワケでは無いが、木兎さんを必要以上に褒めるのでいい気はしない。それに加え、初めて出来た異性の後輩の存在が嬉しいのか木兎さんも逢崎さんを気に入っているようで、やたらとスキンシップが多い。それも俺の心を掻き乱す要因の一つとなっていた。逢崎さんのお陰で木兎さんの調子が右肩上がりなのはいい事だし、世話を焼く必要も無く、楽な筈なのに、気持ちは重くなる一方だった。


/ 103ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp