第1章 転生
妊婦さんだというのに、お母様は瞳をキラキラして興奮しきっている。
……初めてお母様のセンスを疑いました。
「あなた! なんて素敵なお土産! ありがとうございます!」
「そうだろうそうだろう。メアリーは元々考古学の勉強をしていたからね、こういうのは大好きだろう」
初耳です、お父様。
でも確かに言われてみると、お母様のお部屋には小難しい本がいっぱいでしたね。
とても嬉しそうに笑っている両親の手前、不気味だなんて言えない。
この優しい両親は、そんなことを言えばたちまちそれを隠してしまうのだから。私が怖がらないように。捨ててしまうかもしれない。
「クロノ! あなたのお父様はとっても素敵ね! こんなに私の事を分かっている旦那様は他にはいないわ!」
「ふふ……メアリー、嬉しい事を言ってくれるね」
……バカップルめ(※夫婦です)
心の中では毒づいても、結局私だって嬉しいのには変わりがない。
両親の笑顔を見るのは、大好きなのだ。
ぼんやりと両親を見つめていると、お父様に手招きをされた。
お父様が示す先はお膝の上。ちょっと前まではためらったけど、今はそんなの気にしないよ。
「ほら、クロノにはこれを買ってきたよ。大事にしなさい、ね?」
お父様がの首に掛けたのは、小さな雫型の宝石が付いたネックレス。
宝石は私の瞳の色とおんなじ、琥珀色だ。
「いいの? お父様」
まだ私みたいな幼い子どもには早いんじゃ。
「私も少し早いかなとは思ったのだがね。クロノの目と同じだったからついな。その代わり、絶対になくしたらだめだよ?」
「まあ、本当にクロノの目とそっくりね。私でもこれを見つけたら買ってしまいます」
「そうだろう?」
私は首に掛けられた、少し長めのネックレスをまじまじと見て、そっと手のひらに握った。
「おとうさまっ、ありがとうございます!」
嬉しくて、嬉しくて、自然に笑顔がこぼれてしまう。
いつの間にか、不気味な石仮面の存在などすっかり忘れてしまっていた。