第1章 ヤツが出た。
ヤツが出現した現場……自室にみねを連れていく。ヤツは、私が本(本家に内緒で買った恋愛小説)を読んでいる時に現れた。いつものように上から……ううっ、考えるだけで恐ろしい。
「どこにいるのです?」
「どこかにいるはずだから、もっと真剣に探して!」
「なら、お嬢も部屋に入ってきたらどうです?二人で探した方が早いでしょう?」
怖くて部屋になんか入れないに決まってる。だからみねを呼んだというのに。
そんなことを考えていると、上から何かが目の前に降りてきた。待って、これはもしかして……
「ひょぁああああーーー!出たぁーーーー!」
気絶しそうになるが、なんとか足で踏ん張って気を保つ。
「お嬢、今回は蜘蛛でしたか」
私が(精神的に)闘っているというのに、みねは呑気にそんなことを言っている。そして、手の上にヤツを乗せ、庭へと向かう。
「朝蜘蛛は殺してはいけないとよく言うでしょう?」
私の疑問を察したのか、みねがこれまた冷静に言う。朝蜘蛛を殺してはいけない、だなんて初耳だ。
「どうして?」
「蜘蛛に食べられちゃうからです」
「っ~~~!!?」
声にならない叫び声が上がる。
く、蜘蛛って人を食べるの!!!?
「冗談です」
「なっ!?みねのばか!」
「私は食べられかけましたけど」
「ひょっ!?」
「嘘です」
もうみねの言葉なんか信じない。
とか、思ってみたり。