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いとし、いとし【短編集】

第18章 好きな子程いじめたくなる?【刀剣 薬研藤四郎】


「なぁ、大将。聞いてるか?」


ぐいっと腕が引かれ、

あまりの力に上半身だけが前へと進み、前のめりの様な体勢になる。


なんとか自力で立て直そうとするも、
うまく足を出して踏みとどまる事が出来なくて、私の身体は、ボフッと言う音をたてて、腕を引いた張本人である薬研に受け止められる事となった。


「あっ…ごめんなさい‼」

慌てて離れようとするが、
私を抱き止める腕に力がこもる。


「大将は柔いな」


そんな風に抱きすくめられてしまっては、私もジタバタと暴れることすら出来ない。


「ちょ…離して…」



もう、なんなんだ。

私みたいなチンチクリンを、こうやってからかって面白がるのは、この本丸で薬研だけだ。

本当に、なんなんだ…。




「ちょっとからかい過ぎだよ」


間に入ってくれたのは、近侍の青江だった。


「君もね。しっかりしなきゃ。君がそんなだから彼にからかわれるんだよ」


呆れた様にため息を溢しながら私と薬研を引き離す。


「あ、青江さん。ありがとう…ございます」


「いいんだよ。ほら行こうか」



背中を押されて青江に促されるまま執務室へと向かう。


数歩足を進めた所で背後から薬研の声が降って来た。



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