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いとし、いとし【短編集】

第18章 好きな子程いじめたくなる?【刀剣 薬研藤四郎】


「勝ったぜ。たーいしょ」


先の出陣で誉をとった薬研は、そう言いながらじりじりと詰め寄ってきた。


小中高一貫の女子校育ちで、審神者を始める前は保育士という職業を選んでいた私は男性に対する免疫力が少ない。


だから、彼の行動に、
つい、壁際に後退ってしまった。




「誉が貯まると褒美が貰えるんだよな?何にするかなぁ?」



少し意地悪く笑い、
詰め寄られた事に焦る私を、
からかうように少しだけ見上げる綺麗な顔。

短刀らしく、中庭を走り回ったり、
『可愛い』で済むようなイタズラを仕掛けてくるなら、まだ対処できるのだが、


この人は、

いつも、

こうやって、私をからかって遊ぶのだ。


「薬研さん。からかわないで下さい」



顕現した時から、そうだった。


私よりも背が低く、いつも私の顔を少しだけ見上げてはいるものの、

薬研は他の可愛い見た目をしている短刀達とは違い、

確実に男性の雰囲気を纏っていて、

彼の弟達にする様に、
わしゃわしゃと頭を撫でたり、
膝の上に乗せてみたり、
現世の職場を懐かしみながら、遠慮なしに触れあうのは少し憚られた。


彼自身も私がそう感じているのを承知していて、

『俺っちだって短刀だぜ?』

とか言いながら、
『可愛い』とは程遠い雰囲気を纏って、
私をからかいにやって来るから質が悪い。


どこの薬研もこんな感じなんだろうか?

否、きっと、

うちの本丸の薬研だけだと思うんだ。

たぶん…。
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